暑くなってくると、こんな心配が増えてきませんか。
梅むすび「親がそうめんばかり食べている……」



「水分をとってと言っても、なかなか飲んでくれない」
ごはんを出しても、あまり箸が進まない。そんな日が続くと、心配になりますよね。
夏は、若い人でも食欲が落ちやすい季節です。
高齢の方ならなおさら、暑さや疲れで「しっかり食べる」が難しくなることがあります。
でも、そうめんばかりの日があるからといって、すぐに「だめ」と考えなくても大丈夫です。
そうめんは、のどごしがよく、暑い日でも口に入りやすい食事です。
昔から「夏はそうめん」という習慣がある方にとっては、安心して食べられるものでもあります。
大切なのは、そうめんをやめさせることではなく、食べられているものを起点にして、無理なく少し足すこと。



やめさせなくて大丈夫。「食べられているもの」に、1品だけ足していきましょう。
この記事では、夏に食欲がない高齢の親へ、家庭でできる食事の工夫と、水分をとらないときの考え方を、特養で15年以上食事介助をしてきた経験をもとにお伝えします。
夏の食欲低下や水分不足は、脱水や熱中症につながることがあります。次のような様子があるときは、食事の工夫より先に、医療機関へ相談してください。
- ぐったりしている
- 受け答えや、呼びかけへの反応がいつもと違う
- 自分で水分を飲めない
- 尿が極端に少ない
- 発熱、強いだるさ、めまい、ふらつきがある
- 涼しい場所で休んでもよくならない
高齢の方は、急に状態が悪くなることがあります。意識がはっきりしない、自力で水分が飲めない場合は、救急要請も考える状況です。この記事は、体調が安定しているときの、家庭での食事の工夫として読んでください。
- 夏に食欲が落ちるのは自然なこと
- そうめんをやめさせなくていい理由
- 買い置きでできる「プラス1品」の例
- 水分を飲んでくれないときの出し方
- 受診を考えたいサイン
高齢者が夏に食欲がないのは、めずらしいことではありません
暑い日は、食欲が落ちます。
これは高齢の方に限ったことではありません。
冷たいものなら食べられるけれど、温かいごはんやおかずは重たく感じる。
白ごはんが進まない。
肉や魚を見ただけで「今日はいいわ」と言われる。
そんな日があっても、不思議ではありません。
家族としては、
「ちゃんと食べないと体力が落ちるのでは」
「夏バテがひどくなるのでは」
「毎日そうめんで大丈夫なのかな」
と心配になりますよね。その心配は、とても自然なことです。
ただ、食欲がない方に「もっと食べて」「栄養が足りないよ」と言っても、なかなか食事量は増えません。
むしろ、食事の時間そのものが負担になってしまうこともあります。
まずは、今食べられているものを見つける。
そこから少しだけ足す。
高齢者の夏の食事は、このくらいの考え方から始めていいと思います。
そうめんばかりでも、まずは“食べられている”ことを大切に
「またそうめん?」
家族としては、つい言いたくなるかもしれません。
でも、そうめんは夏の高齢者の食事として、決して悪いものではありません。
そうめんには、夏に食べやすい理由があります。
細くて口に入りやすい。
冷たくて食べやすい。
のどごしがよい。
昔から食べ慣れていて、安心感がある。
食欲が落ちているときに、「食べられるものがある」というのは、とても大切です。
特養の現場では、食事量が落ちたときに「何なら食べられるか」をよく見ます。
全部を完璧に食べることよりも、まず口にできるものがあるか。
その方にとって食べやすい形や温度、味になっているか。
そういうところを見ながら、食事を考えていきます。
家庭でも同じです。
そうめんばかりの日が続くと不安になりますが、まずは「食べられている」と受け止めて大丈夫です。
そのうえで、そうめんの横に何を足せるかを考えていきましょう。
そうめんの日は、やめさせるより“横に1品”を足す
夏の食事で大切なのは、立派なおかずを作ることではありません。
食欲がないときに、品数を増やしすぎると、見ただけで疲れてしまうことがあります。
作る家族もしんどくなります。
だから、まずは「プラス1品」で十分です。
たとえば、そうめんの日なら、こんなものを横に添えやすいです。
- 冷奴
- 卵豆腐
- 温泉卵
- 茶碗蒸し
- カニカマ
- ツナを少し
- サラダチキンを少し
どれも、手をかけすぎなくても出しやすいものです。
「今日はそうめんだけだった」を、
「そうめんと冷奴にした」
「そうめんと卵豆腐にした」
このくらいに変えるだけでも、気持ちはずいぶん違います。
たんぱく質を少し足したいときは、卵、豆腐、茶碗蒸しなどが使いやすいです。
噛む力が弱い方でも、やわらかいものなら取り入れやすい場合があります(サラダチキンはパサつきやすいので、飲み込みが気になる方には茶碗蒸しや温泉卵のほうが向くことがあります)。
ただし、飲み込みに不安がある方、むせやすい方は、食べ物の形やかたさに注意が必要です。
「これなら大丈夫」と自己判断せず、医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などに相談してください。
一品を作るのもしんどい日は、冷凍のおかずを温めて足す方法もあります。
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そうめん以外に食べられるものがあれば、それも大切にする
夏は、そうめん以外でも「これなら食べる」というものが見つかることがあります。
たとえば、
- 冷奴
- 納豆ごはん
- 卵かけごはん
- お茶漬け
- ヨーグルト
- プリン
- ゼリー
- 果物
- 味噌汁
- スープ
そうめんに無理に何かをのせなくても大丈夫です。
納豆は、そうめんにのせるより、納豆ごはんや小鉢として出すほうが自然な場合もあります。
冷奴も、そうめんの横に小さく添えるだけで十分です。
「そうめんを栄養満点にしなきゃ」と考えると大変です。
でも、「そうめんの日のどこかで、もう1品食べられたらいい」と考えると、少し気持ちが軽くなります。
毎食きれいに整えなくても大丈夫です。
朝はヨーグルト。
昼はそうめんと冷奴。
間食にプリン。
夜に少しだけごはん。
そんなふうに、1日の中で少しずつ足していく考え方でもいいと思います。
そうめん以外なら、冷汁も食べやすいです
夏に「冷たくて、のどごしのよいものなら食べられる」という方には、冷汁もおすすめです。
冷汁は、ごはんにかけて食べられるので、そうめんと同じように口に入りやすく、暑い日でも食べやすい一品です。
昔ながらの冷汁は魚を焼いてほぐして作ることもありますが、家庭では無理をしなくて大丈夫です。
今はスーパーでも骨とりのあじなどが手に入りやすいので、それを焼いてほぐして使うと、少し手間が減ります。
作り方も、むずかしく考えなくて大丈夫です。
焼いた魚をほぐして、豆腐やきゅうりなど好みの具材を入れ、味噌汁を作るようなイメージで整えます。
それを冷蔵庫で冷やしておき、ごはんにかけて食べます。
魚、豆腐、味噌が入るので、そうめんだけの日よりもたんぱく質を足しやすいのも良いところです。
「今日はそうめんばかりで心配」という日が続くときは、
「今日は冷汁をごはんにかけてみようか」
と、少し形を変えてみるのもひとつです。
ただし、魚を使うときは小さな骨が残っていないか確認してください。
噛む力や飲み込む力に不安がある方は、具材を小さくする、やわらかくするなど、その方に合わせた形にすることが大切です。
また、味噌を使うため、塩分制限がある方は量に注意してください。持病がある方は、医師や管理栄養士に相談しながら取り入れてください。
高齢者が水分をとらないときは、麦茶などをこまめに
夏に食事と同じくらい心配なのが、水分です。
高齢の方は、のどの渇きを感じにくくなることがあります。
本人が「のどは渇いていない」と言っていても、体には水分が必要なことがあります。
日常的な水分補給には、水や麦茶など、飲み慣れていてカフェインの少ないものが出しやすいです。
麦茶は、夏の家庭でもなじみがあり、冷たくしても常温でも出しやすい飲み物です。
「お茶を飲んで」と言うより、「麦茶入れたよ」「ひと口だけ飲もうか」と声をかけるほうが、受け入れやすいこともあります。
反対に、コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物ばかりで水分補給を考えるのは、少し注意が必要です。
カフェインには利尿作用があるため、夏の水分補給としては、水や麦茶などを中心に考えると安心です。
ただし、好きなお茶やコーヒーを絶対に飲んではいけないという意味ではありません。
楽しみとして飲むものと、日常の水分補給として飲むものを分けて考えるとよいと思います。
水分は「のどが渇いたら」ではなく、時間で出す
高齢者が水分をとらないときは、何度も「飲んで」と言うより、生活の中に飲むタイミングを作るほうが続けやすいです。
たとえば、
朝起きたら一口。
朝食のときに一杯。
10時のお茶の時間に一口。
昼食のときに一杯。
おやつのときに一口。
入浴前後に一口。
夕食のときに一杯。
寝る前に少し。
こんなふうに、生活の中に水分を置いていきます。
施設では、水分を時間でお出ししたり、飲んだ量を見たりします。
でも家庭で同じように細かく管理するのは大変です。
家庭では、完璧な記録よりも、まずは「飲むタイミングを決める」ことからで大丈夫です。
飲み物を嫌がるときは「食べる水分」も考える
水や麦茶をなかなか飲んでくれない方もいます。
そんなときは、飲み物だけで考えなくても大丈夫です。
食べ物から水分をとる工夫もあります。
たとえば、
- ゼリー
- ヨーグルト
- プリン
- 果物
- 味噌汁
- スープ
- おかゆ
- 茶碗蒸し
- 豆腐
こうしたものは、水分を含み、食欲がない日にも取り入れやすいことがあります。
「飲み物を飲まないからだめ」と考えるより、
「食べられる水分も使ってみよう」と考えると、少し工夫の幅が広がります。
ただし、ゼリーや果物、汁物は、飲み込みの状態によってはむせやすい場合もあります。
特に、むせ込みがある方、飲み込みに時間がかかる方、食後に声がガラガラする方は注意してください。
飲み込みに不安がある場合は、家庭だけで判断せず、専門職に相談することが大切です。
夏は食事だけでなく、過ごしている場所も見ておく
夏の心配は、食事だけではありません。
施設では、空調が整っていて、食事も栄養士が献立を考えています。
水分も時間で声かけをします。
それでも、夏は普段より気をつけて見ています。
たとえば、暑い時期なのに服を何枚も重ねていないか。
午後の日差しが強い窓辺に、長く座っていないか。
顔色はいつもと違わないか。
ぼんやりしていないか。
食事量や水分量が急に落ちていないか。
認知症のある方は、暑さに合わせて服を調整することが難しい場合があります。
日差しの強い場所に長くいても、自分では移動しないこともあります。
家庭でも、食事だけでなく、過ごしている部屋の暑さや服装を見てあげると安心です。
「ちゃんと食べているか」だけでなく、
「涼しい場所にいるか」
「水分を近くに置いているか」
「いつもと様子が違わないか」
このあたりも、夏の見守りポイントになります。
脱水や熱中症が心配なときに見ておきたいサイン
食欲がない日があるだけなら、まずは食べやすいものを工夫するところからで大丈夫です。
でも、次のようなときは、早めに相談してください。
- 食事量が急に大きく減った
- 水分をほとんどとれていない
- 尿の回数や量がいつもよりかなり少ない
- ぼんやりしている
- 会話がいつもと違う
- 立ち上がるとふらつく
- ぐったりしている
- 発熱や下痢、嘔吐がある
- むせ込みが増えた
- 食後に声がガラガラする
高齢の方は、体調の変化が食事量に出ることがあります。
「夏だから食欲がないだけ」と決めつけず、いつもと違う様子があれば、かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護、地域包括支援センターなどに相談してください。
特に、ぐったりしている、受け答えがおかしい、自力で水分が飲めない、尿が極端に少ないといった場合は、食事の工夫より先に受診や救急相談を考えてください。
まとめ|そうめんをやめさせるより、足せるものをひとつ
夏に親がそうめんばかり食べていると、家族は心配になります。
でも、そうめんは悪者ではありません。
暑い日に食べやすく、昔からなじみのある、夏の助けになる食事です。
大切なのは、そうめんをやめさせることではなく、そこに少しだけ足すこと。
冷奴を添える。
卵豆腐を出す。
茶碗蒸しを足す。
ヨーグルトをおやつに出す。
麦茶を時間で出す。
ゼリーやスープも使ってみる。
そのくらいの小さな工夫で十分な日もあります。
食べないことを責めるより、食べられるものを見つける。
完璧な献立より、今日の一口を大切にする。
夏の介護ごはんは、がんばりすぎなくて大丈夫です。
ただし、ぐったりしている、受け答えがおかしい、水分がとれない、尿が極端に少ないなど、いつもと違う様子があるときは、食事の工夫より先に相談や受診を考えてください。
家族だけで抱え込まず、頼れるところに頼りながら、暑い季節を乗り切っていきましょう。
夏に限らず、「用意しても食べてくれない」が続くときは、こちらの記事にまとめています。
▶︎ 親が介護ごはんを食べてくれないとき|特養ナースが現場で見てきた工夫と考え方
暮らしの場面ごとの記事は、こちらにまとめています。
▶︎ 介護の食事がつらい…と思ったときに|手作りを抱え込まない食事の整え方
本記事は情報提供を目的としたものであり、医療行為や専門職による診断・指導の代替ではありません。体調や飲み込みの力には個人差があります。食事や水分のとり方に迷うときは、医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などの専門職にご相談ください。








