介護食のやわらかさの選び方|噛む力と飲み込む力を分けてみる

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介護食を考え始めると、「どのくらいやわらかくすればいいの?」「やわらかければ安心なのかな?」と迷うことがあります。

しおむすび

「やわらか食にムース食…種類が多くて、
どれを選べばいいのかわからない…」

介護食のやわらかさは、ただ細かくしたり、やわらかくしたりすればよいものではありません。

大切なのは、食べる本人の「噛む力」と「飲み込む力」に合っているかどうかです。

同じ高齢の方でも、噛むことが難しい方、飲み込みに不安がある方、疲れやすくて最後まで食べきれない方など、食べにくさの理由はそれぞれ違います。

私は高齢者施設で、15年以上食事介助に関わってきました。

この記事では、介護食のやわらかさを選ぶときに見ておきたいポイントを、家庭での食事の様子に合わせてわかりやすくまとめます。

むずかしく見えますが、見るポイントは大きく分けて「噛む力」と「飲み込む力」の2つです。一緒に整理していきましょう。

※むせ込みが増えている場合、飲み込みに不安がある場合、食事中に咳が増えている場合は、自己判断で食事形態を変えず、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などに相談してください。

介護食のやわらかさ選びに迷ったときは、「どの区分を選ぶか」だけでなく、まずは今の食事の様子を見ていくことが大切です。

この記事でわかること
  • 介護食のやわらかさを選ぶときに見るポイント
  • 「噛む力」と「飲み込む力」の違い
  • 家庭で見ておきたい食事中のサイン
  • やわらかさを変えるときの注意点
  • 専門職に相談した方がよい目安
目次

介護食のやわらかさ選びで見るのは「噛む力」と「飲み込む力」

介護食のやわらかさを考えるときは、「噛む力」と「飲み込む力」を分けて見ることが大切です。

噛む力とは、食べ物を歯や歯ぐきでつぶしたり、細かくしたりする力のことです。

一方で、飲み込む力とは、口の中でまとめた食べ物を、のどから食道へ安全に送り込む力のことです。

たとえば、やわらかい食事であっても、口の中でまとまりにくいものは飲み込みにくい場合があります。

反対に、噛む力は弱くなっていても、飲み込みは比較的安定している方もいます。

そのため、「高齢だからやわらかくする」「むせたから全部ミキサーにする」と自己判断で決めてしまうのではなく、どこに食べにくさがあるのかを見ていくことが大切です。

介護食のやわらかさは、まず3つの目安で考える

介護食のやわらかさは、家庭では大きく3つの目安で考えると整理しやすくなります。

市販の介護食品では、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード(UDF)」などで、噛む力や飲み込む力に合わせた区分が示されています。UDFでは、「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4つの食べやすさが目安として示されています。

この記事では、その中でも家庭で迷いやすい「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の3つを中心にまとめます。

やわらかさの目安食べる力の目安食事のイメージ
歯ぐきでつぶせる固いものは噛みにくいが、やわらかいものなら食べられるやわらかく煮たおかず、ほぐした魚、やわらかい煮物など
舌でつぶせる歯ぐきでつぶすのも難しく、舌で押すとつぶせるやわらかさが必要形はあるが、舌で押すとつぶれるやわらかい食事、舌でつぶせるかたさのムース食など
かまなくてよい噛む動きが難しく、なめらかでまとまりやすい形が必要ペースト状、ピューレ状、ミキサー食、ゼリー状・ムース状の食品など

この表はあくまで目安です。

ムース食は、商品によって「舌でつぶせる」に分類されるものも、「かまなくてよい」に近いものもあります。

日本摂食嚥下(えんげ)リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」でも、ゼリー・プリン・ムース状の食品や、ピューレ・ペースト・ミキサー食などは、それぞれ形態やまとまりやすさによって分類されています。

つまり、「ムース食だから必ずこの段階」と名前だけで決めるのではなく、商品の表示や、本人の食べる様子を確認することが大切です。

「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」が実際にどんな見た目なのかは、市販の介護食を写真で見比べた記事があります。

▶︎ 「舌でつぶせる」と「歯ぐきでつぶせる」の違いは?介護食のUDF区分を写真で解説

やわらか食とは

やわらか食は、噛む力が弱くなってきた方でも食べやすいように、食材をやわらかく調整した食事です。

見た目は普通の食事に近いものも多く、やわらかく煮る、細かく切る、ほぐすなどの工夫で食べやすくします。

ただし、やわらかいだけで飲み込みやすいとは限りません。

パサつきやすいもの、口の中でバラバラになりやすいものは、飲み込みにくい場合があります。

ムース食とは

ムース食は、噛む力がかなり弱くなっている方や、口の中で食べ物をまとめにくい方に向けた、なめらかな食事形態です。

舌でつぶせる、または噛まなくても食べやすいように調整されているものが多いです。

むせ込みがある場合や、飲み込みに不安がある場合は、自己判断で食事形態を決めず、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などに相談しましょう。

ちなみに「言語聴覚士(げんごちょうかくし)」は、ことばのリハビリだけでなく、飲み込みのリハビリも専門にしている職種です。

やわらか食とムース食の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

▶︎ 介護食のやわらか食とムース食の違い|噛む力・飲み込む力に合わせた選び方

▶︎ 介護食宅配はまず少量から|お試しセットで確認したい5つのこと

やわらかさを選ぶときの3ステップ

介護食のやわらかさを選ぶときは、いきなり食事形態を大きく変えるのではなく、今の食事の様子を見ながら考えていくことが大切です。

家庭では、次の3ステップで見ていくと整理しやすくなります。

ステップ1|まず食事の様子を観察する

最初に見るのは、「今、どんな食べにくさがあるのか」です。

たとえば、次のような様子がないかを見てみましょう。

  • 固いものだけ残すことが増えた
  • 肉や魚が口の中に残りやすい
  • 野菜の繊維が噛みにくそう
  • 食事に時間がかかるようになった
  • 食事の途中で疲れてしまう
  • 口の中にため込むことがある
  • 水分や汁物でむせることがある
  • 食後に声がガラガラすることがある

食べにくさは、「全部食べられない」という形で出るとは限りません。

特定の食材だけ残す、食べるのが遅くなる、口の中に食べ物が残るなど、小さな変化として出ることもあります。

「年のせいかな」と思うような変化でも、やわらかさを考える大切なサインになることがあります。

ステップ2|今食べられているものに近い段階から試す

梅むすび

「安全そうだから、一番やわらかいムース食にしておけば安心じゃないの?」

実は、急に食事の形を大きく変えると、戸惑ってしまう方も多いんです。

やわらかさを変えるときは、いきなり一番やわらかい食事にするのではなく、今食べられているものに近い段階から考えることが大切です。

たとえば、普通の食事の中で肉だけが食べにくそうなら、まずは肉を小さく切る、やわらかく煮る、ひき肉料理にするなどの工夫から始める方法があります。

野菜の繊維が残りやすい場合は、繊維を断つように切る、やわらかく煮る、薄味のあんをかけてまとまりやすくするなどの方法もあります。

「食べにくそうだから、全部ムース状にする」と決める前に、今食べられているものを残しながら、食べにくい部分だけを調整していくと、本人の食べる楽しみも残しやすくなります。

やわらかくしすぎることで、かえって食べにくくなる方もいます。

食感が変わりすぎると食欲が落ちたり、口の中でまとまりにくくなったりすることもあります。

家族が一口確認してみて、「固すぎないか」「パサついていないか」「口の中でまとまりやすいか」を見てみるのも、家庭でできる工夫のひとつです。

ステップ3|むせ込みや飲み込みの不安があれば専門職へ相談する

むせ込みがある場合や、飲み込みに不安がある場合は、自己判断で食事形態を決めないことが大切です。

特に、次のような様子があるときは注意が必要です。

  • 水分でよくむせる
  • 食事中に何度も咳き込む
  • 食後に声がガラガラする
  • 口の中に食べ物が残りやすい
  • 食事に時間がかかり、疲れてしまう
  • 食べる量が急に減った
  • 体重が減ってきた
  • 発熱をくり返すことがある

このような場合は、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などに相談しましょう。

飲み込みの力には個人差があり、見た目だけでは判断しにくいことがあります。

「このくらいなら大丈夫かな」と家族だけで決めるよりも、専門職に相談することで、本人に合った食事の形を考えやすくなります。

家庭でやわらかさを調整しにくいときは、選択肢を増やす

介護食は、毎回すべてを手作りで整えようとすると、家族の負担が大きくなることがあります。

やわらかく煮る、細かく切る、パサつかないようにする、食べやすく盛りつける。

一つひとつは小さな工夫でも、毎日の食事となると大変に感じることもあります。

家庭で毎回やわらかさを調整するのが大変なときは、すべてを手作りで頑張ろうとしなくても大丈夫です。

市販の介護食品や冷凍のやわらかいおかずなどを、必要なときだけ取り入れる方法もあります。

たとえば、家族が忙しい日だけ使う、食べにくいおかずだけ市販品を取り入れる、退院直後や体調が不安定な時期だけ利用するなど、使い方はいろいろあります。

大切なのは、「手作りか市販か」を決めることではありません。

食べる本人にとって食べやすく、準備する家族にとっても続けやすい形に整えていくことです。

手作り・市販・宅配の組み合わせ方は、こちらの記事でくわしく紹介しています。

▶︎ 介護食の準備、毎日どうしてる?手作り・市販・宅配の組み合わせ方

やわらかさの段階を実際に確かめたいときは、少量のお試しセットから始める方法もあります。

▶︎ 介護食宅配はまず少量から|お試しセットで確認したい5つのこと

まとめ|やわらかさは「今の食べる様子」から考える

介護食のやわらかさは、「やわらかければ安心」と決めるものではありません。

まずは、今の食事でどんなものが食べにくそうか、むせ込みがないか、食事に時間がかかっていないかを見ていくことが大切です。

やわらかさを変えるときは、今食べられているものに近い段階から少しずつ調整してみましょう。

食べにくい食材だけをやわらかくする、パサつきやすいものにあんをかける、小さく切るなど、家庭でできる工夫もあります。

ただし、むせ込みがある場合や、飲み込みに不安がある場合は、自己判断で食事形態を決めず、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などに相談しましょう。

家庭での調整が大変なときは、市販の介護食品や冷凍のやわらかい食事を、必要な場面だけ取り入れる方法もあります。

大切なのは、無理に完璧を目指すことではありません。

食べる本人にとって食べやすく、準備する家族にとっても続けやすい形を見つけていきましょう。

やわらか食とムース食の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

▶︎ 介護食のやわらか食とムース食の違い|噛む力・飲み込む力に合わせた選び方

施設ではどんな食事形態があるのかを知りたい方は、こちらの記事も参考になります。

▶︎ 特養の食事形態は何種類?決め方もわかりやすく解説

家庭でやわらかさを調整するのが大変なときは、食べる力ごとに7社を比べた記事もあります。

▶︎ 介護食の冷凍宅配おすすめ7社を比較|やわらか食とムース食を食べる力で選ぶ

参考・出典

  • 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフード(UDF)」
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」
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この記事を書いた人

高齢者施設ナースのみかんです。
食事介助においては、
15年以上の実務経験を積んでいます。

誤嚥性肺炎の予防と、
口から食べる喜びを支えるケアに取り組んでいます。

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